なく頃には「主人公チーム」
「都雄ってなんとなく圭一や戦人と方向性違うよね」「ジェイデンの性格を捉えようとするとイマイチよくわからない」「ギュンヒルドが古戸に見える」との意見をチラホラ見かけた。だがよくよく情報を整理した結果、「今回も非常になく頃にシリーズらしいキャラ配置なのでは?」という結論に至った。
なく頃にシリーズ、振り返ってみるとストーリーの基軸となるのは第一主人公・第二主人公・第三主人公からなる3人の主人公チームである。第一主人公と第二主人公は主義が異なり、両者が誤解から生じた対立を経て和解することにより話が大きく動き、それから影響を受けた第三主人公の介入によりその世界における「最善」が尽くされる。
第一主人公に求められる資質は「正義のヒーロー」と「物語序盤から作中内の問題解決の手立ての資質を与えられているが未熟であること」である。というかこのポジションが初めから完璧超人だったら物語が成立しなくなる。ゆえに序盤では説得(口先の魔術師)が生かしきれなかったり、共感性(チェス盤をひっくり返す)を誤った方向にむけたり、真意を見定める観察力(僚機観察)が発揮出来ない。第一主人公が資質を正しく発揮するためには、第二主人公との主義主張の対立がどうしても必要である。対立を越えて理解し合う都合、第二主人公との絆は最も深いものとなりがちである。高い正義感を持つがゆえに個人的な価値観で動く第二主人公に対しては「知らずのうちに」不義理を働いてしまいがちである。つまり今までたまたま第二主人公が女性だったからなんとなく「第一主人公って女心わかんないタイプ多いよね」みたいな風潮があっただけな可能性が高い。第二主人公が男性であればその要素は不要なのである。
第二主人公に求められる資質は「ダークヒーロー」である。物語開始時から作中コミュニティの影響を悪い意味で大きく受けてしまっている。家庭環境が総じて恵まれていない(養育者から裏切られたり、肉親関係がゴチャゴチャだったり、肉親が虚無なうえに同輩から陰性感情を受けやすい立場であったり……)。生い立ちも影響して「相談が苦手である」。相談できない理由が、不適切な手段に頼ってしまう点である場合は「説得」しなければならず、相談できないほど惨めに感じている場合は「共感」が必要であり、もはや自ら悩みを感じ取れないほど感情が麻痺してしまっているとしたら「観察」して読み取ってやるしかない。つまり第一主人公の得意分野と第二主人公の問題点は対になっている。日常パートではむしろユルすぎるくらいの愛すべきギャップがある。何もないときの第二主人公の印象はたいてい「ほがらか」でさえあり、一度愛着を持った相手にはめちゃくちゃ入れ込む。だが逆に信念や大事なものが脅かされそうになったときのこのポジションは「人生一度きり! 行動力! 思考力! 強靭な意志! 所属するコミュニティに対する不信!」のセットで学校や島や地底に立てこもる。このように行動の動機面では非常に特徴的な共通項が挙げられるにも関わらず各自与える印象は第一主人公や第三主人公に比べてバラッバラである。コミュニティの問題点を提起する立場上、作品の雰囲気を牽引するポジションでもある。図にするとこんな感じ。
第三主人公に求められる資質は、「俯瞰性」と「ど根性」である。俯瞰のポジションから客観的で冷静な視点を持つことが求められる。状況の大幅な改善の機会を得られ真の意味での救いを掴み取ることが可能だが、最も長期で苦しみを抱えることにもなりがちである。梨花は圭一とレナの和解の過程をみてループへの希望を新たに見出し、縁寿は戦人とベアトからの最終ゲームを経て自らの手で自らを救う白き魔女として完全に覚醒した。
都雄、ジェイデンがそれぞれキコニアにおける第一主人公・第二主人公に相当しそうなら、第三主人公は誰なのか? という話だが。今作は「3人1組チームのケッテ」。都雄とジェイデンの関係性から最も影響を受ける人物ということであればギュンヒルドが第三主人公でまず間違いないだろう。えっ1話目から2人に対してめちゃくちゃ好感度高い上に第二主人公の分析カンペキじゃん!? ギュンヒルドを信じろ。
2021/7/9追記:
第三主人公に関する補足をしました。