ひぐらし業:今後の梨花と沙都子
過去記事において、「レナがシロである場合」を仮定した記事を書いた。
ひぐらし業:レナの挙動は? - ちとせあめ (hatenablog.com)
この記事では大いなる見落としがあった。「ひぐらしのなく頃に」と「ひぐらしのなく頃に業」が別作品であることの意味づけが反映されていなかったのである。
以前の記事において、「なく頃に」では立場の異なる第一主人公と第二主人公の対立、そこから学びを得る第三主人公という構造が主軸である旨を述べた。特に第二主人公は、作品の抱えるテーマ性と表裏一体の立ち位置にある。
なく頃には「主人公チーム」 - ちとせあめ (hatenablog.com)
なく頃にシリーズの第二主人公について - ちとせあめ (hatenablog.com)
「ひぐらし」においては前原圭一と竜宮レナという異なる立場の二人が理解し合うことにより古手梨花が学びを得ていた。「ひぐらし業」でもそうであろう、と無意識に仮定してしまっていたのだ。
端的に述べれば「ひぐらし業」で異なる立場にあり、理解し合うことを求められているのは、古手梨花と北条沙都子なのである。
つまり「業」においては、梨花は外側から俯瞰することによって理解する第三主人公ではなく、直接第二主人公とぶつかり合う第一主人公の役割が振られているのだ。
ここで、第一主人公と第二主人公について、過去記事では記載していなかった補足をしたい。第一主人公と第二主人公は、ある点を除けば非常に「似た者同士」なのである。ある点とは、「危機的状況において養育者にしっかり受け止めて貰えた経験の有無」である。
- 前原圭一と竜宮レナは、どちらも過去に親が原因のストレスを受けたことで暴力事件を起こしてしまった
- 圭一の親は接し方を悔やみ、圭一が本当に暮らしやすくするにはどうすれば良いのかを一緒に考えてくれた
- 一方、レナの親は、母親は蒸発、父親は意欲を無くしレナを支えてくれる頼れる存在ではなかった。レナは嘘や隠し事を嫌うようになり、またオヤシロ様の祟りの実在を信じるに至ってしまった。
- 右代宮戦人とベアトリーチェは、どちらも父親が浮気をして生まれた子どもであるという共通点がある
- 戦人の育ての母である明日夢はそのことに気づきながらも愛情深く彼のことを養育した
- 一方、ベアトの育ての母であった夏妃は多くの世界ではベアトを受け入れることができなかった。その結果、ベアトは現在の家族も未来の家族も得る可能性を喪失し、魔法に頼らざるをえなくなった。
キコニア
- 御岳都雄とジェイデンは、超実力主義社会のせいで同世代から浮いて育った
- 都雄は父親である藤治郎からきめ細やかにケアを受けて育っている。父親の影響が濃く、すぐに藤治郎に頼ろうとするのはその影響と思われる
- 一方、ジェイデンは工場育ちで親族がない。兄弟とのつながりが唯一のはずなのに、兄弟達とうまくいっていなかったとの述懐もあるため、幼少期の彼は本当に孤独であったと考えられる。キコニアは現在Phase1までしか公開されてはいないが、ジェイデンが愛情に飢えた人物であることの示唆は既に随所に見られる。
この比較をひぐらし業に適用してみるとどうなるだろうか?
- 古手梨花と北条沙都子は、現在どちらも親のいない子どもである
- 梨花の両親はもともと愛情深く、また両親を亡くしてからも村人達から優しく見守られていた
- 一方、沙都子は元から非常に不安定な家族仲であり、親とうまくいっていた経験というものが皆無である上に村中から村八分を受けていた。「古巣から離れて新しい環境に馴染む」ということの重さが、梨花と沙都子ではあまりにも違いすぎる。
ひぐらし業が自立の物語だとするなら、それは一人で果たされるべきものでもなく、また梨花が一人で羽ばたいていくのでもなく、沙都子と適切に関わりながらそれを探っていく物語になるのではないか、という予想である。