キコニア: 都雄の運命とキコニアの物語
※以下はPhase1で得た情報から発展させた、今後の物語の行末を想像するものです。
御岳都雄。キコニアのなく頃にの主人公である。かわいい。
・母親から「都の英雄」として宿命づけられた名前であること
・父親から「優れたガントレットナイトになるよう英才教育を受けた」
本作品は黙示録がテーマであることからつまり彼には「救世主」としての働きが求められていると思われる。救世主が何をするかというとつまり、人々の代わりに罪を背負って死ぬ役目である。彼の人柄に関しては、描写されている通り非常に責任感の強い性格である。友人のソシャゲの肩代わりさえ気軽に引き受けてしまうような人の良さであり、もしも自分の死が人類の救済のために役立つと知らされれば、自ら望んで受け入れてしまいそうなくらいだ。
青都雄が言っていたように都雄が殺すためだけに仕組まれた存在だとして、AOUのジェイデンやコーシュカと殺し合いになるのは戦争だけでは説明が付かない。ガントレットナイトという存在自体、たとえばエネルギーを得るための「道具」であり、もともと全員殺されてしまう予定……という可能性も高いように思う。本人が望んでなくても藤治郎による外的操作が可能であり、かつおそらく彼の中にはジェストレスの人格もある(前記事参照)。
ここまで考えると状況は完全に「詰み」に見えるが、模範的救世主らしからぬ彼にはとても人間らしい弱点がある。相棒のジェイデンである。
プライベートや進路に関する重要な決定でさえ他人の意見を優先させてしまいがちな都雄が、珍しく自己主張をして調和や救世を後回しにしているシーンがある。
・ジェイデンがミャオと出会って都雄への対応を変えた時
・ミャオが戦争前だからとそんな気持ちになれなくなり始めてるクリスマスデートについて「ジェイデンが楽しみにしてる」と伝えた時
・フラグメント12兄弟の日
である。
都雄のジェイデンに対する気持ちがどのような性質のものであれ、これは完全に「救世主さまらしくない人間らしい弱み」たりうるレベルのものである。
都雄は仮に操られてジェイデンと殺し合いになったところでジェイデンを殺せるのか? どうしても殺し合いになったとしても、何とか抗ってジェイデンだけは生き残すように思う。CPPの身体をコントロールするスポット人格は、積極的に明け渡す以外に精神状態などで大きく左右される。
逆に、相棒であるジェイデンも、もし仕向けられて殺し合いになったところでシンプルに都雄を殺せるとはとても思えない。この相棒、都雄の地位などとはまったくの無関係な好意を寄せている。ジェイデンは、
・本国での飛行禁止→たぶん本国に戻っても居場所ない?
・工場生まれで親はいない
・AOUの歪んだ教育方針の中「天才」として過剰に持ち上げられて育ったせいでボッチ
ヘラヘラした振る舞いに反して、都雄がいないと超絶孤独なのである。そして次回でどうやら世界に「何か」する……たぶん《地獄》を生み出している。ということであれば、動機は都雄のことに間違いないだろう。つまり、「救世主」が「救世主」としての役割を果たす=死なないように総力をあげて食い止めていると考えられる。
「地獄の果てを生き残るに足る理由などないのだけれど君が笑う」
「幾度血を流したとて君は汚れてなんかいない」
この辺りのフレーズとも合致するように思う。
都雄を救世主たらしめないようにする試みはジェイデンだけでは難しいように思うが、「優れたガントレットナイトになるよう英才教育を受けさせた」彼の父親も、都雄のことを息子として愛している部分がしっかりと感じられるように描写されている。元嫁と一緒に都雄を何らかの手駒にしているとしても、最後の最後まであがいて息子を犠牲にせず済むような方向を模索しており、ゆえに単独行動が多いのではないだろうかと感じる。マヤのいたパーティーで若い女の子が搾取されるのに眉をひそめていた彼は親心を持つまっとうな先人で、自らの息子を犠牲にすることは、なるべく避けたい選択肢だと思うのだ。
以上の伏線からキコニアの核心は「救世主となるべく育てられた都雄が、おのれの定められた運命の中で唯一運命とは無関係に出会ったジェイデンに対する人間らしい感情を捨てきれなかったせいで、ジェイデンの泥臭く人間らしいあがきから救世主として潔く死ぬことを許されず、生身で空を自由に飛ぶガントレットナイトの力は失われ堕天して、現世という地獄の中で人間らしく生きるまでの物語」なのではないかと感じる。
キコニア、現状では非常に地獄で未来への希望をへし折るような描写が目立つが、張り巡らされた伏線に目を向けると、とても美しい人間讃歌のメッセージとなり得るものであるように感じてならない。この物語がどのような結末を迎えていくのか、とても興味深い。