ちとせあめ

なごみ(@higuumi753)07th expansion様の作品について、長文になりがちな考察をメインにアップしていきます。新規情報の追加や新たな視点からの考察の結果記事同士が多少矛盾することもあるかと思いますがお目溢し頂ければ幸いです。

キコニア:GMの目的は?

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うみねこGMの目的は「プレイヤー(戦人)が魔女を認めるまで続く互いにとっての永遠の拷問」であり、ゲーム盤を通して理解を求めるものであった。だから回答者をきちんと指名した上、解くべき謎を碑文という形で提示し、解きやすいようヒントを増やしていった。

キコニアの場合はどうだろうか? どうやらGMがいるらしいのに、「の仕事は惨劇の渦中に踊ること」などと言っている。ゲーム盤で勝敗を決するのが目的ならプレイヤーに言及がないのは不自然である。むしろ理解させたくないような様子さえ感じる。仮説として生じるのが、「キコニアのGMは勝負をする気が全くない」ということである。にも関わらず「ゲーム盤を取り仕切る必要がどうしてもあった」ということは、つまり「特定の同じ時間を繰り返すこと自体が目的である」のではないか?

うみねこでは「何度も同じ時間を繰り返す」というのは実際に時間を巻き戻すわけではない。しかし、ひぐらしのゲーム盤では、実際に同じ時間を繰り返していた。今回のゲーム、GMがはっきり名乗りをあげているだけで、コトはひぐらしのゲーム盤に近いのではないだろうか。つまり、《観劇の魔女》がなんらかの目的で同じ時間を繰り返しているという仮説である。

こんな《地獄》の時間を繰り返すことに何の意味があるのだろうか? 実は既に明確に動機が推測できてしまう人物がいる。というか、

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世界を生み出しているらしい時点で確実にジェイデンがGMである。しかも、都雄が救世主として25日に人間として死ぬよう宿命づけられているのであれば(救世主について: https://nagomi753wtc.hatenablog.com/entry/2019/12/08/145936)その前の時間をぐるぐるループし続ける動機は十二分である(ジェイデン像について: https://nagomi753wtc.hatenablog.com/entry/2019/12/16/210521)OP2番の「幾度血を流したとて君は穢れてなんかいない」とも符合する。つまりジェイデン、(主に)都雄の延命のために《地獄》を生んでいる。作中でも何度か出てきたフレーズ、「引き延ばし」である。ジェイデンは恐らく生身の人間であるため、本当に時間を巻き戻しているとは考え難い。現実の時間はずっと進んでおり、シミュレーター(おそらく《天国》になる予定であったところ)の仕組みを濫用して《地獄》を生んでいる可能性が高い。ジェイデンが言っていたように「古いデータを消して」しまえば可能である。既にシミュレーター内の可能性が高い理由として①GMがこの度の出来事をゲーム盤として認識している、②VRについての会話でジェイデンが都雄に対し「最初っから」一心同体と言っている、③ギュンヒルドの「年齢より落ち着いて見える」のフラグや、彼女の人物像と矛盾するように見える「この世界は滅ぼすべき」とのフラグメント15の発言など。

 

ここで今回の表題に立ち返ると、観て楽しむのは「私たち」と複数形なのである。前記事(https://nagomi753wtc.hatenablog.com/entry/2019/12/12/132653)より、「現世の上位都雄は謀略によりほとんど動けないような状態であり、駒の都雄は彼の記憶に基づいて動いている」という説を採ると、たぶん上位のジェイデンは上位都雄と一緒にそれを眺めようとして拒絶されている。本人としては「自由の利かない都雄ちゃんのために都雄ちゃんが元気に飛び回れる世界作っちゃいました! あれ、何で喜んでくれないの……?」という感じだろう。おそらく動機としては相手を喜ばせたい、救いをあげたい、自分自身も元気そうな相手の姿が見たい、などのある意味ひたむきな理由だがまさに地獄の道は善意で舗装されている状況になってしまっている。

 

ところでGMの動機を考えたところで事件の根本的な解決が可能なわけではない。多分、都雄自身が救世主として定められた運命に殉じようとする態度を改めない限りジェイデンが《地獄》を止めることもないだろう。もはや彼自身が相棒の延命装置になっているようなものである。もし繰り返す《地獄》にジェイデン自身が既に苦痛を感じるようになっていたとしても滅多なことでは止められないはずである。意外と繊細らしい上位ジェイデンのメンタル状態が懸念される。